米国内での韓人の権益向上と政治参加
KACEとLA韓人会

アメリカで選挙投票するためには、有権者登録が必要です。移民者にとっては有権者であっても有権者登録は大変にハードルの高い手続きです。しかしながらさまざまな問題解決のために一票を投じるためには不可欠な手続きでもあります。
アメリカで韓人の政治参加を支援する活動をしている方々をたずねました。
韓人のアメリカ社会への政治活動参与活動をしているKACE市民参与センターのキム・ドンチャン(Dongchan Kim)代表が有権者登録支援の活動を始めたきっかけは、LAの91年の暴動をであったそうです。LA暴動が起きるまでは、アメリカンドリームしか見えなかったといいます。多くの人びとはお金を稼いでいずれは韓国に帰り、豊かな暮らしをすることを考えていたし、それなりに一生懸命生きていた。それが、暴動をきっかけに自分自身がアメリカでいかにマイノリティとして生き残るのか、生存の問題として考え始めるようになったといいます。
この活動を始めたのは、政治参加ができないことはこの国で陰の存在でしかないと考えるようになったためです。韓国では日本と同様にその年齢になれば行政から投票案内が送られてきます。そのためアメリカの有権者登録が何なのかもわからなかったそうです。1996年にキム・ドンチャン代表がこの活動を始めたころは、LA,シカゴ、アトランタなどでも同じ思いで活動を開始したグループがありましたが、現在活動しているのは市民参与センターだけです。
キム・ドンチャン代表は、アメリカ市民はすべてのことを自分たちの責任で行い、自分たちで権利を守る人達であり、脱法行為をすればそれは自分の責任であるといいます。韓国では市民が自分たちに権利があるかどうか知ることができず、不法行為を行わないように法が作られているので、仮に法を犯しても多めに見てくれることがあるが、アメリカの場合はそれがないことが大きな違いだといいます。アメリカで政治参与は完全に自己責任であり、有権者登録は自分がしなければ誰もしてくれません。だれかが韓人の有権者登録を促進しなければ自分たちマイノリティの問題解決はどうにもならない。キムドンチャン代表は有権者登録の重要性をそう語っています。

活動の中で最も功を奏したのは、市に掛け合って公式に作成した有権者登録申請書の韓国語バージョンです。これは韓人の有権者登録のハードルを下げました。説明会を開き有権者登録の窓口にも自ら立ちました。
2017年の統計でニューヨーク州の有権者登録は91.4%に上ります。登録者に対する投票参与率は62.4%です。これに対しニューヨーク州韓人有権者登録は54.2%、投票参与率は47.7%です。韓人有権者全体から見れば韓人の市民参与は30%に及びません。現在は有権者登録を有権者の80%まで押し上げ、80%の投票率を目標とし、韓人全体の64%まで投票率を上げる「8080キャンペーン」を掲げています。

エミイ・バン(Amy Bang)氏もノウハウをニューヨーク市民参与センターから得て、ロサンジェルスで有権者登録促進活動をしています。実際に2017年春に行われた市の下院議員選挙に立候補した韓国系のロバルト安のキャンプで選挙運動に参加するのに併せて有権者登録の勧誘活動を行いました。
ロサンジェルスもニューヨーク同様に居住する多くの韓人有権者は選挙にあまり関心をもっておらず、有権者登録をしていません。中には自分が有権者であることすら知らない人もいるといいます。そうした有権者に呼びかけるために、韓人が集まるスーパーマーケットや教会、マスコミに加え韓人会の名簿を頼りに一軒一軒家を訪ねました。ところが有権者の反応は想像以上に鈍かったそうです。
傾向としては70歳以上の有権者は韓国系の候補者に好意的であるが、40代から60代の有権者は同じ民族だからという理由で投票はしないといいます。40歳以下の人々は日々の生活に追われ選挙自体に関心がありません。
この地域に唯一ある警察署は韓国系の議員がいたころにできたものです。現在では韓人の警官と通訳が二人常駐しています。エミイ氏は警察署ができて安心して暮らせるようになり、政治参与の重要性を痛感したといいます。残念ながらロバルト安氏は落選しましたが、韓人の声を政府に届けるためには若い世代に対する有権者教育が重要であると考え、実際にLA韓人会ではティーンエイジャー向けの講座を開いています。
◎アメリカの選挙制度における有権者登録についての詳細な内容は大林啓吾・白水隆編『世界の選挙制度』2018年 三省堂をご参照ください。
