死角地帯②難民:難民人権センター
難民が韓国に来る理由の一つは潘基文国連総長の影響がある。人権国家のイメージを現実にしなければ
難民人権センターの常勤ケースマネージャーで活動家のコ・ウンジ(Go,Eun-Ji)氏
イデオロギー、宗教、民族、女性、マイノリティを理由に権力のある者が積み上げた高い塀の中に閉じ込められ、生きもできない生活をしている人がいる。そうした人を韓国に受け入れるために活動している難民人権センターの常勤ケースマネージャーで活動家のコ・ウンジ(Go,Eun-Ji)氏に話を聞いた。
Q:2013年7月に難民法が施行されました。難民法の運用についてセンターのお考えをご教示下さい。
センターでは半年ごとに統計を出している。現時点で累積15250名が申請していますが、難民認定を受けたのは600名に満たない3.8%と大変に低い。またこの認定率だけでは判断できない。また、今年の上半期については法務部に情報公開を要請しても、公開してくれない趨勢だ。 直接に難民の方々と触れ合って支援する立場から見ていると難民認定を受けなければならないと判断できるレベルでも多くの難民申請者は難民認定を受けることができていないのが現状だ。審査過程の公正性、専門性、透明性が不足しているのを皮膚で感じている。
昨年一年だけで、5711名申請した。今年はさらに増える見込みだ。難民申請数は増える一方だが認定率はこれまでの水準を維持するかより厳しくなるであろうと見込まれるので認定を受けられない人は増えるということになる。これまでは首都圏でだけ申請を受付けていたが、施行後は全国レベルで申請を受け付けている。手続き進行する過程で地方に定着する難民申請者数が増えている状況だ。また、認定後にしっかりと定着する支援がほとんど無いのが現状であり、事実認定を受けても他の国に行く場合も多い。
Q:難民人権センターの支援活動について教えてください。
センターは2009年、難民法が制定される前に設立された。難民は自分の国家から脱出し、日常的な権利を失った状況だ。それを取り戻すために韓国に定着し、第二の故郷として生きていけるようにする活動を行っている。
まずは難民認定を受け、韓国政府によって権利保障を受けることだ。安全な在留、生存権の保障のための経済活動、人間が生きるのに伴うその他の権利のために、団体では手続きの過程への支援活動を行っている。法律相談が第一だ。難民は自分の国家を逃れてよく知らない国に来ている。新たな制度への理解が困難だ。本人の権利が何なのかもよくわかっていない人もいる。手続き過程で彼らの権利を一つ一つ理解できるよう面談を行っている。
団体で少し深く介入するケースでは、実際に申請書を書いたり、本人のストーリーにあう証拠を収集したりする。また、本人の経験、本人が難民にならざるを得なかった経験を自分たちの言語で整理して話さなければならないので、一度の面談でなく長いスパンでの対話が必要だ。なぜ韓国政府がこのような資料を要求しているのか。なぜ難民申請者がこのような話をしなければならないのか。どのように話すのが韓国政府を説得できるポイントになるのか。最終的には自力で認定をもらえるようサポートしている。
自分たちはNGO団体の立場から一貫した志で政府を相手に制度改善のための運動も行っている。政策改善、法改善について運動などがそうだ。難民法の中で生活の処遇に関する制度が改正されたが、こうした提言をしている。現場で起きている問題について政府に見えるように活動することも大事だ。また認識拡散活動の一環で市民を対象に難民についての広報、難民の人との対話をする機会なども提供している。
Q:難民認定はどの国でも時間がかかると言われていますが。
全ての難民申請から最終的に難民認定を受けるまでの所要期間は、現在の韓国の場合、早くて3年、遅いものでは制度施行後まだ結果の出ていないものもある。審査段階ごとに必要事項がそれぞれ異なるため、センターはここに介入していく。
定着過程で3年から5年というと生活の問題が発生せざるを得ない。短くない期間に生存権の保障だけでなく、人間が生きていくための他の権利も極めて制限される。生活の問題、医療の問題、児童養育の問題、生活の過程での問題が発生した時に、周辺の支援団体や地域の支援へつなげることも仕事だ。さらに、あまりにも問題が大きくて他の支援団体も介入したがらないケースもある。本当の死角地帯だ。そういう緊急事態と判断された時には難民センターで介入していくということも事業の一つだ。緊急生活医療支援としている。
Q:難民認定でうまくいかなかったケースを教えてください。
難民審査の結果は書面で送られてくる。そもそも難民審査は個別に行われるべきで、厳密で制度化された方法でなければならないはずだ。だが実際に送られてくる書類は難民認定ができない理由をコピー&ペーストしてあるケースがあった。同じようなケースであっても個々人の事情は違うはずだ。そうした点を熟慮した形跡がなく、一般的な事由によって非認定となるケースがある。
裁判所が審判すれば認定に至るというケースがあった。一次段階で認定が受けられるのにもかかわらず、時間を引っ張って訴訟に至ったケースもあった。従来は法務部で直接審査し認否を決定するが、この結果に不服がある場合は法務部の審査に対する異議申請ができる。訴訟になる場合もある。
裁判所は独立した判断をするので行政とは異なった判決が出る場合がある。だから裁判で認定を受ける確率が高いとも考えられている。ただ、どの判事か、どの弁護士かによっても異なる。先ほど公正性の話をしたが、よく似たケースだと同様の結果にならなくてはならないはずが、判事や弁護士によって結果が異なるのだ。だからみんなは難民認定を受けられるかどうかは運だという。難民認定の不確かさを表しているだろう。
Q:何故、難民らは韓国を目指すのでしょうか?
やむを得ず韓国に来た場合と、韓国を目指してきた場合がある。
やむを得ず来た場合は、難民が少しでも早く本国から逃れなければならない場合が大部分だ。最も早くビザを取得できた、あるいは航空便が調達できたといった場合だ。オプションが一つしかないという場合が多く、韓国を選んできたというよりは、一番早く行けたのが韓国だったという場合が多い。
本人が選んできた場合は、本国で迫害を受けている場合は、本国と緊密な国家を最大限避けることを考える。そこに行っても自分たちの安全が保障できないからだ。それから本国から最も遠い国を選ぶということもある。スーダンからの難民などのケースは遠いという理由で来る場合がある。より良い国家、例えばカナダや、イギリスなどは韓国に比べビザを取得するのが難しい。だから事実上不可能だ。そのため自分の選択基準で最も安全だと考える国を選ぶ。特に潘基文国連総長の影響で韓国は人権国家であるイメージもあり選ぶケースも増えている。
また、現地在留中難民もいる。元々違う理由で韓国内にいたが、今回のシリアのように、在留中に帰れなくなるケースもある。すでに韓国で定着していて韓国内にネットワークや職場あるなどの場合もあり、そういった場合は積極的に韓国が選択される。
Q:制度の改善点を教えてください。
最も重要な過程に法務部の面接がある。面接内容は記録されるので自分たちも見ることができるため法務部の人が難民のどのような点を見て判断するのかがわかる。ただ、面接での質問からは、難民を認定しようとしていると見るには難しい点がある。そもそも認定ができないように質問を進めていくのだ。一般的で誰が答えようが同じような回答しかできないような、難民たちが本人の陳述ができないような質問だ。高圧的な態度で、イエスかノーかで答えなさいというような形式で面談を進めることもある。難民らの陳述を聞こうとする姿勢ではなく、予め答えが用意されておりそれに併せて質問を差し入れるというような方式だ。審査の過程を改善する必要があるだろう。
また、難民法では難民協約の内容をカバーしており、国際基準で考えればもう少し認定率が上がっても良い筈だ。難民認定の基準は大きく3点、少し細分化しても5点程度で、十分に符合しているに実際に認定されていないケースがある。これは解釈上の問題だといえる。例えば対象者の範囲はその代表例だ。協約上の対象範囲に比べ国内法の対象範囲が狭いことが挙げられる。
この延長線上で文化の違いというのも露呈してきている。サポートをするために自分たちは海外の判例を参考にする。この程度だと勝訴できるだろうと思っていても、韓国での社会的通念といった観点の違いが出る場合がある。例えば性的少数者のケースがそうだ。特定社会集団構成員であるという理由で難民申請をするケースがある。性的少数者、女性のケースは認定されづらい。韓国では証拠の多くは難民らが立証しなければならない。国際難民協約では難民の陳述自体が証拠となる。実際の経験を立証するには難しい構造であるために、本人に立証の責任がない。陳述が異なるといった立証の責任は受け入れ政府にある。制度に対する専門性が確立されておらず、審査担当者も二年ごとに代わることも問題だ。
それから、制度の悪用もある。自分たちはNGOなのでそれを判断する立場にないと考えているが、例えば審査期間が長いことが悪用の原因となる場合がある。なぜなら審査期間が3~5年というのは逆に韓国で働きたい人にとっては都合がよい。カナダなどは認定までの期間も6ヶ月と短い上、非認定理由を申請者にしっかり納得させるシステムがあるので異議申請数も少ない。韓国でも審査期間が6ヶ月だったら、働くために悪用するには期間が短すぎるため申請の意味がないと考えるので悪用は減るはずだ。そう考えると悪用の原因は政府の審査システムにあるとも考えられる。(2016年9月)
