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韓国の新たな社会統合政策についての研究
Research for New Social Unification Policy in Korea

Consensus-Building

合意形成(共感帯)のために

国家平生教育振興財団 平生教育事業本部 中央多文化教育センター
専門員のキムジェウ(Kim,Jae-woo)氏、パクチミョン(Park,Jimyung)氏

キム・ジェウ氏とパク・チミョン氏

韓国の政策は制度(理論)と当事者(Fact)・NGO(死角地帯)の関係を理解し、国民への働きかけをとおして合意を形成していく(共感帯)。韓国国民と移住民との関係強化や相互理解のために事業、ガイドライン作成や政策提言の現状を聞いた。

国家平成教育振興財団の中央多文化教育センターでは韓国国民への教育をとおした多文化理解プログラム、また多文化学生※のための支援プログラムを進めている。近年の動向を専門員のキムジェウ(Kim,Jae-woo)さん、パクチミョン(Park,Jimyung)さんにお聞きした。(※ここで使用されている「多文化学生」とは両親の一方が韓国籍を持っている家庭で育つ学齢期の子供という意味です)

Q:センターの役割を教えてください。  

中央多文化センターは2009年に設立された。2011年にはそれまで大学に委託していた事業を引き継いだ。本センターは教育部の傘下機関で、予算の出所は教育部(日本でいう文科省)だ。

中央多文化教育センターの事業は韓国人を対象とした多文化教育推進だ。構造上、私たちの事業対象は人というよりは機関、多文化教育をしている機関である学校だ。政策開発、統計収集と加工、直接的な研究、あるいは対象を特定した研究をとおして、一年で進行できるプログラムとガイドラインを作成し、指定された学校の教員がカリキュラムを実践するという構造だ。政策側で政策伝達手段としてプログラムは説明会、ワークショップ、コンサルティングを開催している。プログラム担当職員は多い時で40名あまりだ。高校以外の多文化学校に指定されている全国の学校に直接行くので決して多いとはいえない。

Q:指定された学校ということは、すべての学校が多文化教育をしているのではないのですか?  

共感帯資料

広い意味では、すべての子供たちへの学校教育を通した多文化教育が行われている。教科書の改編も昨年9月(2014)にあり、より多くの多文化的な内容を取り入れた。新規教育課程は2017年からだ。ただ、どの国も同じだが多文化という教科があるわけではない。教科書の中で取り入れているだけだ。日本も同じだろうが、中高の学習は入試中心だ。別途に科目や時間を設けるのは難しい。

それから、具体的な対象を特定した多文化教育は予備学校、多文化教育重点学校、研究学校の三つの体制で行っている。予備学校では学校内に設置された施設で、移住青少年(韓国語が分らない子たち)が、授業についていけない場合に入学までの猶予期間を設けて適応プログラム、韓国語など準備教育を行っている。重点学校では一般学生と統合して行う教育プログラムを行うミッションを持っている。この二つはプログラムを実施するのが目的だ。研究学校はこれらプログラムの実施に加えて研究の使命がある。特別のプログラムやモデルプログラムを作る。また、一般に対しても公募展、討論会などの開催をとおして認識提供を行っている。多文化教育という点では以上の大きく3つの事業だ。(写真は国家平生教育振興院発行の多文化プログラム指導書『多様な視角、自由な思考(高等学校用)』130頁(2015年)である。食生活文化の理解として、韓国、中国、日本、西洋、インド、ガーナの食器を比較している。国家平生教育振興院から提供を受けた。)

Q:全国で同じように行われているのですか?事例などを紹介してください。

予備学校は2015年時点で全国に100校、重点学校150校、研究学校3~40校だ。2010年の開始時に予備学校26校が13年に50校、昨年70校 現在は100校と増加し続けている。今後も減少することはないだろう。状況は地域によって異なる。ソウル、京畿地域では予備学校を中心に多文化教育が行われている。移住者らは大都市や工業公団に多い。それから農村地域の小学校だ。

ニーズに応じて行っているため全国均等という訳ではない。ただ正規の学校内に設置するという方法は全国一律だ。また、担当教員の教育や、教員の要求受付はこちらで一律に引き受けている。教員は公務員だが、仕事を持続的に行うのは簡単ではない。担当を変えてくれというような要請もある。教師の信念を持つ人よりも業務として推進する人が多いために、担当配分などバランスをとることを心がける。2012年から14年までは多文化コーディネーター強化プログラムも行った。現在は開拓期の水準だと考えてくれればよい。

教育事例ということだが、大変に敏感な話が多いので公開していること以外の教育内容を話すのは難しい。模範事例については毎年事例集を公開している。

Q:これらの事業は政権が変わるごとに違いが出るのでしょうか?

どのようなスタンスで答えるべきか迷うところだが、毎年の流れの変化はある。2012年には教育部で多文化学生教育先進化法案が出された。2009年から毎年、年単位で推進してきた事業を未来予想的な観点から見直し法案だ。方向性は修正されながら政権交代後も変化しているが多文化教育という観点から見た場合、これらの変化が政権の影響とは考え難い。

Q:どのようなプログラムが効果的でしたか?また、効果の無かったプログラムは?

多文化の子供たちの入学者数増加が10年ほど前から顕著になり増加の傾向にある。ただ現時点では学齢期前の子が多い。また、子供たちは多文化をうまく体感できていない。統計上何年か後には学校に各1名は在学するようになるので認識に変化も見られるだろうと予想される。

それから効果の無かったプログラムということだが、教育は他の事業と異なり長期的に投資していかなければならない。可視的な成果を出すためには方法を変えればよいが、それでは本末転倒だ。事業別に言えば、特に予備学校の子供の場合は大きな変化を期待するのが難しい。なぜならこの子たちは韓国人の児童たちとは別々に学習するために、韓国での生活像が見つけにくい。また親の都合で韓国に在留しているために韓国の生活に適応しようという動機自体が強くない。特に文化、言葉、歴史の場合は他の科目よりも難しい。本人たちも苦しい筈だ。正規ではないが、別途に教育課程についてはメンタリング支援を行っている。講師を教育大学や師範大学の学生に担ってもらっている。

Q:今後の事業などについて聞かせてください。

これまでの学校中心の多文化学生に接する事業は、地域センターや15年からは本格的に地域の教育庁(日本でいう教育委員会のような役割をする機関)へ移管してきた。事業を拡大するためには中央政府が主導するよりも自治体レベルで行うほうが地域の事情にあった形でのプログラム進行が可能だからだ。地域の専門家に任せれば、特化した内容もスムーズに進行できるという利点がある。中央で行う場合はおのずと期間が決められる。初期段階だけは介入して予算も決定するが、教育部では極めて特性のある事業を除いては、事業が持続的に進められるよう市・道に事業単位で移管する。今後ますます事業の地方自治体への移管が進むだろう。

センターは事業ベースのためどのような政策が編成されるのかによって事業内容も大きく変わる傾向がある。ただ、本センター役割の一つが政策を検討しフィードバックを活用することだ。新たな事業の提案もするが、併せて既存の事業をいかに管理するのか、どのように効率的に進めていくのかにも重点をおいている。今後は新規事業に加えて既存の事業を高度化させることが重視されるだろう。

それから新規事業のコンテンツ作りだ。教師らに多文化教育を行うことが一つだ。これまでは小中校だったが最近では幼小中高を一括りにし、幼稚園での多文化教育をどうやるのか、現在実験的に行っている。

事業推進という点ではどの水準まで国家が介入するのか悩む所だ。多文化学生のためにどこまで国はしなければならないのかといったことだ。今後も支援を続けなければならないという意見と、国家があまりタッチしない方が良いという考えがある。既に学校には支援が必要な子供たちのためのプログラムは多い。多文化を分けて対象とするのではなく、既存のシステムの中に多文化学生の子供を入れて普遍的なシステムを構築する方が子供にとっても、政策効率性の面でも効果的だ。現在は過渡期的な状況だ。

ただ、立場が変われば考えも違う。政府や政府の委託を受ける人々は政府の介入が必要だと信じている。センターの立場は中立的だが依然と喚起しているのは同化プログラム(ここでいう同化とは多文化の子供たちを韓国の児童の学習水準に引き上げるという意味)中心で行こう、特段の学力不振や特別な子供を対象とした支援や多文化学生だけを選別的に行う支援でなく、構造自体を変えるのが必要ではないか。政策自体に換気が必要だと考えている。こうした意見は伝達しているが、他の国とも国も同様に韓国でも大部分の行政事務は上意下達方式なのでなかなか難しい。

それから教育部の新たな試みとして、多文化学生を対象に英才教育を行うプログラム「グローバルブリッジ」がある。彼らの潜在的な能力を開発し、多文化を逆手にとってグローバルな人材を育成しようというものだ。言語や芸能、スポーツ、グローバルリーダーシップや数学、化学などに区分されている。無料で3∼400名程度が現在対象となっており、教育や育成は政府から委託された大学が担うというものだ。

こうした事業があるからと言って多文化の子たちが優遇されているとは言い難い。ただ、韓国低所得の国民との比較的な観点から、政策が変わったり多文化学生への支援の需要が増えたりした場合や出稼ぎの外国人の子供の問題を見ると再考の余地もある。韓国政府が対象としているのは韓国国民と定住者で、出稼ぎ外国人の子供たちは韓国人でもなく韓国に定住しないため政策の対象から除外される。また多文化の子供よりも支援を必要としている低所得者層がいるのも確かだ。これは政策の死角でもある。韓国の多文化は福祉から始まっており、多文化の教育も福祉的な観点から論じられることが多い。だが今後は教育の普遍化という観点から教育を福祉から分離して政策を考えていくことが要求されてくるだろう。(2015年9月)

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